死神キューピッド
全身に残る心地のいい倦怠感も、腰の重みも、虹太の唇の赤い痕も、ちゃんとここにある。


その前髪に、指を通し、そっと虹太の髪を梳く。


ぐっすりと眠る虹太をしばらく見つめていると、ぽたっと大粒の涙が落ちた。


……バカ虹太。


目の下はくぼんで、顔色は悪いし、痩せこけてるし。


それでも幸せそうに眠っている。


穏やかな寝息、少し高めの体温が、いまはここにある。


だから、もう、なにも考えない。


虹太がいてくれれば、私はホント、それでいいの。




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