死神キューピッド
「虹太、バイトなんてしなくていいよ。なにもしなくていい。ただ、隣にいてくれればそれでいい」


本当にそれだけでいいの。


だから、お願い。


もうどこにも行かないで。  


背中を向けた虹太の表情は、わからない。


怒ってるのかもしれないし、あきれてるのかもしれない。


こんなこと言ったら、また出て行っちゃうかもしれない。  


それでも……


「虹太、お願いだから。ホントに、お願い」


「なに言ってんだよ。バイトだよ」


「でも、嫌だ」


「……わがまま言うなよ」


だって、また虹太を失うなんて耐えられない。


「帰ってくる、絶対。だから、待ってて」


黙って、頭を横にふる。


「柚、ちゃんと……、帰ってくるから」


低くて硬い虹太の声が、私を拒絶する。


これまで、一度だって虹太が私を拒絶したことなんてなかった。


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