死神キューピッド
もともと虹太は、私とは住む世界が違う人だった。


燦燦と降り注ぐ光のなかで輝いているような虹太と、日陰に生息して湿った土壌に安心するような私。


わかっていたけど。


長い時間を一緒に過ごすうちに、虹太をつつむ眩い世界が自分のものだと錯覚しちゃったんだろうな……。


虹太が消えて、私の世界は止まった。


眩しすぎる虹太と一緒にいたせいで、もとの世界がものすごく薄暗く感じてしまう、この地獄。


はあ。


ペットボトルのお茶を一口飲んで、長い息をはく。


お茶買った自分、えらい。


勢いでカゴに突っ込んだ謎のエナジードリンクはさすがに飲む気にはなれない。


……なんで、こんなの買っちゃったんだろ。


でも、いきなり消えるって!


失礼っていうか、無礼っていうか、なに様ですか?


別れたいなら、そういうサイン、くれればよかったのに。


曖昧に終わりにすることが優しさだとでも思った?


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