死神キューピッド
「……そうだよ」


「虹太は……私が、ほかの人とキスしたり一緒にお風呂入ったりして、ほかの人の隣で寝ても、いいの?」


「……そんなの、嫌に決まってんだろ。ふざけんなよ」


絞り出すように吐き出したその言葉が、じわりと沁みる。


「……もう、会えないの? 帰ってくるつもりは、ないの?」


だから、あんな抱き方をした。


全てを奪って、たくさんの痕を残して。


虹太の唇の痕が消えたころには、私のなかから虹太が消えるように……。


最初から、全部終わりにするつもりで、帰ってきたの?


あまりに無情な仕打ちに、隠しとおすつもりだった本音が発露する。


「どうして……私を一人にするの?」


沈黙が重くて、痛い。


「私が気付いてないとでも思った?」


大きく息をすって、目を伏せる。


お願いだから、この先を言わせないで。


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