死神キューピッド
「柚、バカなこと言うな。絶対に、そんなこと、言うな。そうじゃなきゃ、……俺が、どんな思いで、」


「……だから、この部屋で、こたつにしがみついて、虹太の帰りを待ってたの! それなら、なんで、わたしを置いていくの?」


「ごめん、ごめんな。寂しい思いさせて、ごめん。怖い思いさせて、ごめん。……こんな姿で帰ってきて、本当にごめん」


ごめん、と繰り返しながら、両腕で私をくるもうとする虹太を、ありったけの力で押し返す。


「そうじゃない! これから、だよ? ひとりになっちゃうのは、これからなんだよ」


発露する想いと、こみあげる嗚咽に、呼吸すらままならない。


苦しいよ、虹太。


ねえ、苦しくてたまらない。


「もう、ひとりは嫌なのっ。虹太、消えないで? お願いだから一緒にいてよ。幽霊でも地縛霊でもいいからっ! どんな虹太でも、いいからっ」


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