死神キューピッド
「ごめんな、ごめん」


「それができないなら、私を、虹太のところに、連れてって! もう、虹太のいない世界なんていらないの。私なんて、いらないの」  


「……柚、本気で怒るぞ」


虹太の声が唸るように低く震える。


虹太にぶつけたい言葉たちが、発せられないまま喉の奥に落ちていく。


―――こんな虹太、見たことない。


いつだって虹太は眩しいほどに明るくて、健全で。


紡ぐ言葉は、優しくて、柔らかくて。


こんな荒んだ目をする虹太を、見たことがない……


余裕がなくて……瞳の奥は仄暗くて……。


虹太は、きつく眉をよせて……固く、手のひらを握っている……。


そっか……。


虹太、……怒ってるんだ。


虹太は、怒ってる。


他のだれでもなく。


死んだ自分に、怒ってるんだ。



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