死神キューピッド
「っく、うっ」


めちゃくちゃにご飯をつめこむ。


コホコホっ!


もう、どうなったって、いいんだから!


虹太のいない人生なんて、意味がないんだから。


「ダメだろ、そんな食い方しちゃ」


―――え?


……どうして?


鍵の音もなく、ドアが開かれることもなく。


ただ、そこにいきなり虹太が現れた。


消えたはずの虹太が、居心地悪そうに笑う。


幽霊のくせにキラキラ煌めかないでほしい。


涙の膜が張って、虹太の姿がぼやける。


ぐにゃりと輪郭がゆがんだ世界で、虹太の声だけがはっきりと耳に届く。


「俺さ、問題起こして、向こうの世界に入れてもらえなかった」


……………は?


「……まあ、つまりは、成仏させてもらえなかったっつうか。こうやって人は地縛霊になっていくんだな……」


眉をさげて、虹太が視線を落とす。


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