ソルティキャップ
俺が部室に入った瞬間、クラッカーの音が大きく鳴った。
「陽介!!退院おめでとー!!」
同級生の奴らが、みんなクラッカーを持って立っていた。
部室は不器用に飾られ、『陽介退院おめでとう』と下手な字で書かれた紙が、壁に貼ってあった。
みんなのガタイのいい体と、頭に被った三角コーンみたいな帽子が不釣り合いで、俺は思わず笑ってしまった。
「おいおい、そんな面白いことあるか?」
「いや、なんだよ、その帽子。似合わなすぎだろ。」
俺は笑い過ぎて、みんなを直視することができなくなった。
「いいだろ~?お前も被るか?」
鮫島が俺に被せようとするもんだから、
「いやいや、俺は被らねーよ。」
と跳ねのけた。すると、鮫島は
「そうかぁ…お前もいい具合に似合わなそうだと思ったんだけどなぁ」
と言った。
「似合わなそうなら、被せようとするなよ!」
俺がツッコミを入れると皆が笑い出した。もちろん、俺も笑った。
久々に笑ったもんだから、お腹も顎も痛くなった。
「待って、やばい。笑いすぎて顎攣りそう。」
俺がそう言うと鮫島が、
「お前最近笑ってないだろ。笑ってないと、顎の筋肉が衰えて、二重顎になるんだぞ~~」
と言って、俺の顎を撫でてきた。それを見て、またみんなで笑った。
俺は、よく皆で、練習後の部室でバカ騒ぎしていたのを思い出した。
みんなあの頃と何も変わっていなかった。
もどかしさを感じていたのは、どうやら俺だけだったようだ。
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