ソルティキャップ
振り返ると、同い年くらいの女の子が立っていた。
「あの、これ、帽子」
俺が落とした野球帽を拾ってくれたようだった。
「あ、ありがとうございます。」
帽子を受け取り、ソファの方に振り返った瞬間。突然その子が咳き込み出した。
女の子はしゃがみ込み、息苦しそうに咳をしている。
よく見ると彼女の顔と手は赤く腫れ、震えていた。
「だ、大丈夫ですか。」
俺はただ、そう聞くことしか出来なかった。
「大丈…夫…です…」
咳の合間に、女の子は消え入りそうな声で言った。どう見ても大丈夫じゃないその光景に、俺は困惑するばかりで、何も出来なかった。
やがて看護師が来ると、看護師はその子の顔を見るなり、
「離れて!!」
と俺に鋭い目つきで言った。
もしかして…俺のせい…?
さっきまで気持ちよかったエアコンの風は、俺を冷やかすように吹いていた。
彼女が運ばれた後、静かになったロビーに「35番」が呼ばれた。
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