ソルティキャップ
結局原因は何なのか、いまいちよくわからなかったけど、俺も原因の一つであることはよくわかった。だったら、絶対何かしらのお詫びは必要だろう。
「あの…お詫びに、俺、何でもしますから。ほんと、何でも言ってください。」
俺がそう言うと、彼女は俺の目を真っ直ぐ見つめて、少し意地悪な顔をして言った。
「今の言葉、忘れませんからね?」
彼女はゆっくりと体を起こすと、少し考えてから口を開いた。
「じゃあ…」
彼女が何かを言いかけたとき、病室のドアから誰かが、ものすごい勢いで入ってきた。
「真結(まゆう)!大丈夫か!!」
その人の声は聞き覚えがあって、俺はすぐに「あいつ」だと確信した。
病室に入ってきたのは、叶汰だった。
「お前…」
叶汰は俺を認識すると、血相を変えて俺の前へ来た。
「お前、真結に何したんだよ!!」
俺は叶汰と目を合わせなかった。されるがままに胸ぐらを掴まれ、揺らされていた。
女子の前で大男2人が喧嘩をする訳にはいかない。しかも、ここ病院だし。
「お兄ちゃん、この人は悪くないよ!」
彼女は酸素マスクを外し、叶汰に負けない声で言った。
「まじで許さねぇからな。」
叶汰はそう言い捨てると、俺を突き放し、病室を出て行ってしまった。
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