ソルティキャップ
1月12日日曜日
新年になり、最初の診療日。もう痛みはほとんどなく、まだ力は入りづらいが少しなら動かせるようになってきた。
「こんにちは~」
新年初のお見舞いなのに、俺はいつも通りに挨拶してしまった。
「今年もよろしくお願いします!!」
彼女の挨拶を聞き俺は、はっとして慌てて、
「あ、えっと今年もよろしくお願いします!」
と深々とお辞儀をした。
「なんか野球部っぽい」
と、彼女はくすくすと笑った。
ところで今日は叶汰の姿が見当たらなかった。
「今日は叶汰は来てないんですか?」
「なんかお兄ちゃん、バイトあるからって逃げるように帰っていきました」
彼女は唇を尖らせた。
「あいつ、結構忙しいんですね」
「違います。私たちのこと冷やかしてるんですよ。ここを出る時、『お二人で楽しんで』って言ったんですよ」
彼女はそう強く言うと、息を切らして肩を上下させた。
「まあまあ、あいつなりの気遣いですよ。今日は2人でゆっくりしましょ」
「そうですね…あの、せっかくだし初詣行きません? すぐ近くに神社があるんです」
「おーいいですね、行きましょう」
俺はその神社を知らないから当然場所も分からない。かと言って、彼女もベッドから動こうとしない。『行こう』と言ったはいいものの、時が止まったかのように沈黙が滞った。
「あ、あの…すいません。ベッドから車椅子に移動するの、手伝ってもらえませんか。最近思うように体が動かなくって」
そうか、彼女の病はもうそんなにも彼女の体を蝕んでいたのか。俺は少し悲しくなりながら、彼女の体をひょいと抱き上げ車椅子に乗せた。右腕はまだ使い物にならないから、片腕だけで彼女を持ち上げたけれど、それでも軽いと感じてしまうくらい彼女の体はやせ細っていた。
「すいません。ありがとうございます。片手で持ち上げられるなんて流石ですね」
「真結さんが軽すぎるだけです」
俺は車椅子を押した。生きるために必要な機械が増え、車椅子は以前よりも重みを増していた。
「こんにちは~」
新年初のお見舞いなのに、俺はいつも通りに挨拶してしまった。
「今年もよろしくお願いします!!」
彼女の挨拶を聞き俺は、はっとして慌てて、
「あ、えっと今年もよろしくお願いします!」
と深々とお辞儀をした。
「なんか野球部っぽい」
と、彼女はくすくすと笑った。
ところで今日は叶汰の姿が見当たらなかった。
「今日は叶汰は来てないんですか?」
「なんかお兄ちゃん、バイトあるからって逃げるように帰っていきました」
彼女は唇を尖らせた。
「あいつ、結構忙しいんですね」
「違います。私たちのこと冷やかしてるんですよ。ここを出る時、『お二人で楽しんで』って言ったんですよ」
彼女はそう強く言うと、息を切らして肩を上下させた。
「まあまあ、あいつなりの気遣いですよ。今日は2人でゆっくりしましょ」
「そうですね…あの、せっかくだし初詣行きません? すぐ近くに神社があるんです」
「おーいいですね、行きましょう」
俺はその神社を知らないから当然場所も分からない。かと言って、彼女もベッドから動こうとしない。『行こう』と言ったはいいものの、時が止まったかのように沈黙が滞った。
「あ、あの…すいません。ベッドから車椅子に移動するの、手伝ってもらえませんか。最近思うように体が動かなくって」
そうか、彼女の病はもうそんなにも彼女の体を蝕んでいたのか。俺は少し悲しくなりながら、彼女の体をひょいと抱き上げ車椅子に乗せた。右腕はまだ使い物にならないから、片腕だけで彼女を持ち上げたけれど、それでも軽いと感じてしまうくらい彼女の体はやせ細っていた。
「すいません。ありがとうございます。片手で持ち上げられるなんて流石ですね」
「真結さんが軽すぎるだけです」
俺は車椅子を押した。生きるために必要な機械が増え、車椅子は以前よりも重みを増していた。