春風、漫ろに舞う
それだけ言うと。
わたしは、気まずくなってお手洗いに立ち上がった。


本当はトイレに行きたいんじゃない。
ただ、1人になりたかった。



「…はあ…。」



気が重たい。
楽しくなかったわけじゃない。
むしろ、藤雅のお父さんも認めてくれていたし優しくしてくれた。
藤雅のお母さんだって。


なのに、やっぱりどこかで一線置きたい自分がいる。
この家に…極道の世界に入るのが怖い。



「…帰りたいな…。」



実際ここってどこなの?
車で連れてきてもらってるから、全然分からない。
どうしたら家に帰れるかな…。


ポケットに入ってたスマホでマップを開いて見てみる。

うわ…。
結構遠いんだな…。
ここからならどうやって帰ればいいんだ…?



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