春風、漫ろに舞う
わたしは、宴会場には戻らず。
その足で玄関を探しに歩き出した。


人が全然居ない。
みんな宴会に参加しているようで、わたしとすれ違う人は誰一人いなかった。



「…玄関探すのにこんなに大変だとは思わなかった…。」



歩いても歩いても玄関が見当たらない。

こんなに広いお家に来るのは初めてだし、そもそも間取りなんて知っているはずもない。
無謀だったかな…。



そう思いながらも、何となく来た時の事を思い出しながら歩いていたら。
やっと、玄関を見つけた。



「よいしょ…。」



自分の靴を履いて、わたしは玄関を出ると。
藤雅にメッセージを送って。
一条邸を後にした。


自分の中で、最低なことをしてるのだって分かってる。
挨拶もしないで帰るのは失礼だって。
人の好意を無下にしてるもの分かってる。


それでも、この人達とは関わっちゃいけない。
わたしとは住む世界が違いすぎる。







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