春風、漫ろに舞う
「正直…俺は、君を若の女として認めたくない。
君のように覚悟も無い女を、命懸けて守れるとは思えない。
…そんな女に、うちの組員も傘下の奴らの命も懸けれねえよ。」


「……はい…。」



喉まできた文句の言葉が。
十葵の言葉で、飲み込まれた。


間違いない。
言ってることは間違いないんだ。
わたしには、命を懸けて守ってもらう価値だって何も無い。



「…だけど。
あの人を…若を止められるのは、君しかいないんだ。」


「…止める…?」


「もう、俺の声も蒼樹の声も届かない。
…もし君が。
まだ若のことを…藤雅のことを好きでいて、一緒にいる覚悟があるなら。
あの人を止めてやってほしい…。」



語尾を震わせて、わたしに頭を下げる十葵の姿がバックミラー越しに見えた。


止める…?
なにがどうなってるの…?
藤雅に何かあったの…?


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