春風、漫ろに舞う
「……う、そ…。」



嘘だ、あれが藤雅…?
だってわたしの前じゃ、いつも笑ってくれてあんな風に暴れたりもしてなかった…。
いつも優しく笑ってくれていたし、わたしの声が好きだって綺麗だって褒めてくれてた。

そんな、わたしが知ってる藤雅じゃない。
あんな風になった藤雅なんて、見たくない。



「蒼樹。」


「……ああ。」



蒼樹さんが藤雅の方へ行く。
その成り行きを見ていると、蒼樹さんは藤雅の拳を受け止めた。

止めに入ったけれど、藤雅は止まることがなく今度は蒼樹さんに標的が定まった。
その時に藤雅の手から離された何かが、ずるり…と音を立てて崩れるのを見て。
それが人間だったんだと分かった。


蒼樹さんに拳を向ける藤雅。
もう見ていられなくて、目を逸らした。



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