春風、漫ろに舞う
「…それから、ずっとこんな感じ。
飯も食わず寝てもいない。」


「そ、そんなっ…。」


「君がいないから、必要ないんだって。
自分の立場も、存在も。何もかも。」


「……そんなこと、ないのに…。」


「どうする?
君は、若を受け入れられる?
また逃げるくらいなら、最初から受け入れないでほしい。…藤雅が傷つくだけだから。」


「……。」


「もし、これで君が帰ってきたら。
きっと藤雅は何があっても、君を手放さないと思う。
…藤雅の愛を、受け止められる?」


「…わたしは……。」



十葵の言葉に。
わたしは逸らしていた視線をあげて、藤雅の方を見た。





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