春風、漫ろに舞う
蒼樹さんに殴り掛かる藤雅は、どこか虚ろな目をしていて。
何を映しているのか分からない。
いつもかっこよくスマートに整えられていた服はボロボロになっているし。
返り血なのか、藤雅の血か分からないけれど汚れてしまっている。


藤雅も…辛かったんだね。
わたしが、辛かったみたいに…。
ううん、違う。
きっと、わたしよりも辛かったんだ。
置いて行ってしまったから…。


蒼樹さんもそろそろ限界なのか、顔がしんどそうだ。
十葵も加勢しているけど、藤雅を止めるのは2人がかりでも難しいみたい。


わたしがすることは…。



「若!もうおやめ下さい!」


「若、もういいだろ!死人も出てるんだぞ!
こんなの…芽来ちゃんが見たら悲しむぞ!?」


「……うるせえよ。
気安く名前呼んでんじゃねえ。」


「十葵…!」


「…っ、大丈夫だ…。
蒼樹、俺はいいから若をお止めしろ…。」



ごめんなさい、わたしのせいで。
わたしが藤雅を置いていったから…。



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