春風、漫ろに舞う
「ーー……藤雅。」


「……。」



怖くて緊張もしてたから、小さな声だったかもしれない。
それでも、わたしの声に、藤雅の手が止まる。
そしてゆっくりと、わたしの方を見た。


今まで散々に悩んだし、後悔もした。
自分から切り離したくせに。
これからも、一緒にいたら悩むことだって沢山出てくると思う。
まずは、お母さんに伝えるところから始まるし。


…だけど今は、そんなことどうでもいい。
藤雅と一緒にいたい。



「……め、ぐ…る…?」


「うん…。わたしだよ、藤雅…。
ごめんね…ごめんなさい…。」


「…めぐ、る…めぐる…めぐる…。」



ふらふらになりながら。
駆け寄ってきた藤雅は、膝から崩れるようにわたしのお腹に腕を回した。

うわ言のようにわたしの名前を呼びながら、お腹に回した腕の力がどんどん強くなる。



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