春風、漫ろに舞う
「ごめんね、藤雅…。
置いていったりして…。辛かったね…。」


「…めぐる…めぐる…。」



頭を撫でながら、藤雅にそう語りかける。
子どものようにわたしに縋り付く藤雅は、もうあの凶暴性は見られなかった。


よかった…。
落ち着いてくれたみたいだ。
十葵や蒼樹さんの方を見ると、2人とも安心したような顔を見せてくれた。


藤雅がある程度落ち着いたところで、わたしたちは車に戻り病院へ向かった。
この気温で、飲まず食わずだった藤雅は熱中症やら脱水症状の可能性もあるから。



「…めぐる…。」


「大丈夫だよ、一緒にいるよ。」



車内でも、わたしの膝に頭を乗せてお腹に抱きついてきている。
藤雅の手を握って、頭を撫でると落ち着いたようで寝息を立て始めた。



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