春風、漫ろに舞う
「先程は、大変失礼致しました。」


「え…?」



振り返ると。
さっきと同じ、真剣な声色で。
わたしに土下座をする十葵がいた。



「若の女…一条の若姐に、失礼なことを申し上げたこと御無礼お許しください。
今後もよろしくお願い致します。」


「と、十葵…顔上げて…。」



え、どうして…。
わたしなんかに土下座をするの…。
そもそも、人に土下座されたのなんて初めてで、どうしていいのか分からない。


とにかく顔をあげてほしくて、そう言うと十葵は顔を上げてくれた。
真剣な眼差しでわたしを見ている。



「さっきも言ったけど…。
十葵が言ったことは間違ってないよ。
だから…少しづつ、向き合うように頑張っていくから…。
わたしこそ、よろしくお願いします…。」



なんて言うのが正解か分からなくて。
十葵の言葉に返すように言うと。
わたしは、隣の病室へ向かった。



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