春風、漫ろに舞う
「…藤雅…。」



病室のベッドの上で。
規則的な呼吸をしながら眠りについている藤雅の手をそっと握る。

傷だらけで、包帯の巻かれてる手。
沢山の人を殴ったりしていたから…。
ガーゼや包帯まみれで、見ていて痛々しい。


綺麗な指先だったのに…。
痛かったよね、ごめんね。
わたしのせいで苦しい思いさせてごめんなさい。



「…綺麗だなあ…。」



長い睫毛が、藤雅の呼吸に合わせて震えているのを眺める。


大丈夫…?ちゃんと生きてるよね…?


あまりにも綺麗な寝顔に不安になって、藤雅の胸元に耳を当てる。
ドクンドクンと、一定のリズムが聞こえてきて、ほっと一息。





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