春風、漫ろに舞う
『お母さん帰ってきたら、居ないんだから!
こんな時間まで何してたの!?
あんた今日バイトも何も無いでしょ!』


「ごめん。」



お母さんの金切り声が聞こえる。
ただ、わたしは謝ることしか出来ない。
心配かけたのも事実だし。
だけど、そんなに怒らなくてもいいんじゃないかなあ…。


もう帰るから、と。
お母さんに伝えようとしたら、藤雅がわたしの携帯を取った。



「えっ…?」


「お母様、娘さんを夜遅くまで連れ回してすみません。
私、芽来さんとお付き合いさせて頂いている一条藤雅と申します。
また改めてご挨拶に伺いますので、よろしくお願い致します。」



藤雅…?
どうして、お母さんに…?



「はい…はい。
責任持って私がお送りしますので、ご安心下さい。
それでは、失礼致します。」



藤雅は、電話を終えると。
わたしに携帯を返してくれた。



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