春風、漫ろに舞う
「藤雅、ちょっと…!」


「暴れるな、大人しくしろ。」


「…あっ…!」



あーあ。
俺はいつからこんなに、芽来の周りのもの全てに対して嫉妬するようになったかな。
元々嫉妬深い方だとは、自覚していたが。


お前が守らなければいけないもの。
…いっそ、俺が壊してやろうか。

そうしたら、賢いお前なら気がつくだろ。
お前が俺以外になにか大切なものを作ったら、全部壊されていくって。
そうしていくうちに、お前には俺しか残らなくなる。


お前はなにも守らなくていい、ただ俺に守られて俺に愛されて。
俺の隣だけで笑っていればいい。
お前を泣かすのも、お前を笑わせるのも全部…全部俺だけ。
お前の世界は、正真正銘…俺だけになる。



「最高だな。」


「…?」



そっと芽来の口の中で弄んでいた指を引き抜く。
不思議そうな顔をしながらも恥ずかしそうに頬を紅潮させている芽来が見つめてくる。


もっと悪戯したいがそろそろ、逆上せたらまずい。
出るか、と声をかけて抱き上げた。






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