春風、漫ろに舞う
「あら、藤雅。
今年は随分早いご到着ね。
来ないって言ってたのに。」


「お袋。」



やっぱり、あの目立つ集団が一条さんたちだったんだ。
なんとなく予想はしていたけど。
藤雅に連れられるがままに歩いていたら、ここに辿り着いちゃったから。



「あら、芽来ちゃん!
来てくれたのね!嬉しいわ〜!」


「あ、こんにちは…。」



てっきり冷ややかな目で、今更なんなのよとか言われるのかと思ってたけど。
藤雅のお母さんは、あの時と変わらず優しく笑いかけてくれた。


それでも、若干気まずさを感じるわたし。
顔が引き攣ってるかも。



「そうだ、ジュース冷やしてあるの。
何か飲む?」


「あ、いいんですか…。」


「いいわよいいわよ!
ほら、こっちおいで。暑いでしょ〜。」



藤雅のお母さんはわたしの手を引いて、パラソルの中にどんどん入っていく。


氷の入ったクーラーボックスから、1本のりんごジュースをくれた。
他にもビールとかもあるみたいで、藤雅が早速ビールを開けてるのを視界の隅で見つけた。



「怖くなっちゃったの?」


「え…。」



藤雅は、ビール片手にパラソルから出て行っちゃったから。
藤雅のお母さんと2人で、パラソルの中で座っていたらそう切り出された。
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