春風、漫ろに舞う
「あの日から、全然お顔見ないから心配してたのよ。
藤雅の様子から怖くなって離れたのかと思って。」


「…すみません、でした。」


「いいのいいの!
誤解しないで、責めてるわけではないのよ?」



どんどん気まずくなって。
思わず、体育座りしてる膝に顔を埋めた。


心配してるみたいに、わたしの背中を撫でてくれてるけど。
本当は、心配なんてしていなくて。
顔をあげた瞬間に叩かれるかもしれない。

うちの息子を、あんな風にして!って。



「怖くなっちゃうのは当たり前。
極道なんて…普通に生活してたら、関わる事なんて絶対に無いものね。」


「……。」


「私も藤くんも、芽来ちゃんの事の気持ちは分かるからそんなに気にしないで。
本当よ、怒ったりしていないわ。」



声色が優しくて。
なんだか、泣きそうになってしまう。


わたしが、悪いのに。
あの時逃げたことは…絶対、わたしが悪いのに。



「むしろ感謝してるの。
あんな馬鹿息子を大事に思ってくれて…受け入れてくれて。…ね?」


「おい、どうした?体調悪いか?」



藤雅の声がして無意識に顔を上げると。
戻ってきたようで心配そうな顔をしてる藤雅と目が合った。
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