春風、漫ろに舞う
「お袋、お前芽来になんかした?」


「いやねえ、何もしてないわよ。
女子会してただけよ。
…ねー?芽来ちゃん。」


「…はい、千歳さん。」



機嫌の悪そうな藤雅に笑いかける。


ほんとだよ。
藤雅のお母さんは、素敵な人だね。
わたしなんかを受け入れるなんて。
藤雅のお母さんだけじゃない、藤雅自身だって…優しくて世界で1番大好きな人。



「そういや、芽来。
お前水着に着替えてねえの?」


「うん。
そもそも、海入る気ないから。
わたしはここで待ってるから、遊んできて大丈夫だよ。」



水着は最初から持ってこなかった。
水着に着替えるのが嫌だったから。
わたしカナヅチだから、泳げないしね。



「芽来ちゃん暑くないの?長袖で。」


「日焼けする方が嫌なので。
ちょっとの日焼けで火傷みたいになっちゃうんですよね。」


「だからお前いつも長袖なのか。」


「そうだよ。
ほら、いいよ行ってきて。
わたしはちょっと休ませてもらってるから…。」



車酔いも少しあったみたい。
この暑さも相まって、本当に具合が悪くなってきちゃったかも。


ひらひらと海に行った藤雅と、藤雅のお父さんの方へ行った千歳さんに手を振って。
パラソルの下で横になる。
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