春風、漫ろに舞う

「お二人の世界だな、あそこは。」


「ああ。
俺たちの入る隙はねえよ。」



蒼樹の言葉に返事を返しながら、朝食を口に運ぶ。


あんな風に笑ってる若だが、昨日の深夜まで仕事に追われていた。
芽来ちゃんが寝付いたあと、彼女の傍でPCに目を通していただろう。
深夜に若から仕事のメールが届いたから、間違いない。
芽来ちゃんといるときは、PCもスマホもほとんど見ないようにしているらしく連絡がつきにくいのが難点だけど。
それだけ、芽来ちゃんと一緒にいる時間を大事にしている証拠だ。



「若があんなお顔をされているのは初めてだな。」


「芽来ちゃんが今までの下心まみれの女と違うからね。
あの子は、藤雅の顔も金も地位も興味ないと思うよ。」


「表の世界でいえば、芽来さんの方が地位がある。
見たよ、この間の雑誌。」


「本人は恥ずかしがって取材のことも雑誌のことも何も言わないけど、事務所に藤雅が大量買いしたから有り余ってるよ。」


「俺も若から頂いたし、持ってない組員はいないんじゃないか？」


「姐さんも３冊購入したそうだしな、組長も何冊か購入したらしい。
あの子はすごいね本当に。」