春風、漫ろに舞う
たまたま仕事中に、PCに入ってきたニュースで。
芽来ちゃんの所属するバンドの特集が組まれた記事を見つけて。
読み進めると、音楽雑誌で対談インタビューをした時のものだった。
詳しくは雑誌に、とありきたりなPRだったが藤雅に聞くと知らなかったようで。
買ってこいと、その場で買いに行かされた。

その話が気が付くと、本家にも広まり…ひいては、組長の耳にも早々に入ったようだった。

芽来ちゃんを可愛がっている姐さんは買うだろうと思ったが、まさか組長までご自身で買われるとは誰も想像しなかった。
姐さん一筋、姐さん以外の女性には興味もないと思っていたけど。
あの子は、不思議な子。
一条…人の心の内にスッと入ってきて馴染んでしまう。
今だって芽来ちゃんに挨拶しに組員が行くくらいだ。
独占欲と支配欲の強い藤雅に殺気まみれの視線を浴びせられるのは分かりきったことなのに。
藤雅の布教活動のせいか、今じゃ組員の中には芽来ちゃんのファンまでいるほどだし。



「…裏では、一条の姫とすら揶揄されている。」


「…!」



蒼樹の言葉に、一瞬どきりとする。


その言い回しは、芽来ちゃんを褒め称えた言い方じゃない。
極道の世界も狭いわけじゃない、一条を蹴落として君臨しようと思う組だってある。
芽来ちゃんが若頭…すなわち、一条組の弱点だと踏んでいる者たちが言っているだろう。
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