春風、漫ろに舞う
「……俺の、せいか…?
俺が…芽来を放置したから…?」



弱々しく、うわ言のように呟く若。
今まで前線で勇ましく堂々と指揮を執っていたようには、全く見えない。

…こんな若を見るのは、芽来さんがいなくなった時以来だ。


こんな時、十葵がいてくれたら。
上手いこと言ってくれるんだろうな。
俺は、口下手だから…気の利いた事を言うのは苦手だ。
だけど、あいつには後処理を任せて居るから今頃忙しいんだろう。



「…なんでだ…。
何に悩んでいたんだ…どうして、おれは…気づいてやれなかった…。」


「まだ意識は戻っていませんが、大丈夫だと院長が仰っていました。
…だから、大丈夫です。
話せる機会も、時間も沢山あります。」


「めぐる……めぐる…。」



涙を零しながら、身体を震わせている。


いつ何処で誰に殺されるか分からない世界で生きるよりも。
若にとったら芽来さんを失う事が、何よりも怖いのだろう。

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