春風、漫ろに舞う
「ですが、何も言わないわけには…。」


「わたしから、言うから。
大丈夫…慣れてるから、これくらいじゃ死なない。」



そう言う芽来さんは、いつもより表情が冷たい。
まるで、死ねなかったことを悔やんでいるようにも見える。


そんな顔、初めて見た。
どうして…そんな悲しい顔をするんだ、この人は。



「…なんでお前はそんな顔するんだよ。」


「…藤雅…?」


「…俺が、悪いからか……?
お前の事、不安にさせたからか…?」


「…違うよ。
藤雅のせいじゃない。」


「だったらなんで…!」


「……聞いて、くれるかな。
蒼樹も…そこに座って。」



さっきまで医者が座ってたところに、芽来さんは俺を手招いた。

医者も空気感を察知して、そっと席を外していたらしい。


…緊張する。
芽来さんに対して、緊張したのは最初の頃だけだったのに。

どんな話が、されるんだろう。
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