春風、漫ろに舞う
ドアを開ければ、美味しそうな香りが一気に広がる。
あんまりお腹空いてない気分だったけど、この香りが食欲を掻き立ててくる。



「美味しそう〜。食べよう〜。」


「芽来ちゃんって、蒼樹といる時そんなにニコニコしてたのー?」


「え、なに。ニコニコしてないけど。」



そういうこと言うと、ほら。
藤雅がすごい顔で蒼樹のこと睨んでる。


そんなにやきもち妬かなくてもいいのに。
妬いてくれるのは嬉しいけど、毎回こうだと正直…面倒に思う時もある。
それで嫌いになるなんて、絶対にないけど。



「まあ、でも。
蒼樹のご飯が美味しいのは嘘じゃないからね〜。
あ、わたしのこれ?
ハンバーグ付きだ〜。いただきます〜。」



関わるのも面倒なので、我関せずに席についてもぐもぐと食べ始める。

そんなわたしに倣うかのように、藤雅も隣に座って仏頂面。
食べさせろ、と言いたげにわたしとご飯を行ったり来たりで見つめてる。


やだよ。
わたしやらないからね。
自分で食べなさいよ。


なんて、言いたいけれど。
今の藤雅はしっかり機嫌悪いから、仕方なく食べさせてあげる。
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