春風、漫ろに舞う
「芽来様。お食事の方はいかがですか。」


「あ、とても美味しいです。
ありがとうございます。」


「何かお好きなものがあるならお取りしましょう。
女性は、やはり甘いものがお好きですかな?」


「あ、いえ、お構いなく…。」


「成田。それ以上、俺の女に近寄るな。
勝手に話しかけてんじゃねえよ。」


「し、失礼致しました。」



わたしが緊張してるのを気づいてくれてるのか。
それとも、藤雅のいつも通りの独占欲なのか。

どっちか分からないけど、今のわたしには正直有難いと思ってしまう。


お父さん以上の歳の人が、わたしにぺこぺこ頭下げてご機嫌取りしてくるのは。
気持ちのいいものでは無い。
慣れるわけが無い、こんなの。



「一条の若、失礼致します。
新しくうちの組に入ったものでご挨拶を…。」


「……!」



少し嫌気がさしてきて。
疲れたなあ、なんてぼんやり思っていたら。

わたしより少し年上…くらいの、男の子と目が合った。
ここにいる人たちに比べたら、多分一番わたしと年齢が近いと思う。


くりっとした瞳が子犬みたいで、可愛くて。
藤雅に、上司であろう人に促されながら自己紹介してるの何気なく聞く。


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