春風、漫ろに舞う
「あれー?芽来?」


「…かん、な」


「どした?顔色悪くね?」


「あ、ちょっとめまいが…」


「やばいじゃん、あそこのベンチいこ」



柑奈がベンチまで支えてくれて。
おまけにペットボトルの水までくれた。


そのお陰もあって、さっきよりは楽になった気がする。
柑奈が通りかかってくれなかったら、あの場で座り込んでもおかしくないくらいだったから。



「ごめんね、バイト…。」


「いいって!30分遅くあがれば良いだけだし!
大丈夫?生理とか?痛み止めいる?」


「大丈夫だよ、ありがとう…。」


「無理すんなよー?
やば、そろそろさすがに行くわ!
ゆっくりしていきなよ!」



じゃーね!と手を振ってバイトに向かった柑奈を見送って。
もらったお水をぼんやりと眺める。


…藤雅に、話さなきゃ。
でもなんて話せばいい?どこから話せばいい?

これ以上、迷惑な女だと思われたくない。
嫌われたくない。



「…帰りたく、ないな…。」



わたしの心はいつでも、藤雅を欲してるのに。
今は会いたくない。


降り始めた雪を見て、わたしは小さく呟いた。
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