春風、漫ろに舞う
義理の母…つまりは、わたしの母にも懐いていたと思う。
よくお手伝いしてるのを見てたから。
関係はわたしから見るに良好だった。



「藤雅は知ってるよね。
わたしの家の、2階の廊下の奥。突き当たりの部屋。
あそこが兄の部屋、ピアノしか置いてないけどね。」


「ああ。前に聞いたな。」


「…あそこは、わたしと兄の秘密の部屋だった。
2人でピアノしたり、兄の趣味だった本も沢山置いてあったから。」



壁一面の本棚に色々な本が入ってて。
家の中なのに、そこは図書館みたいで楽しくて。
わたしが読むからと、兄は絵本も児童文学も置いてくれた。

読み聞かせだってしてくれた。


いつも穏やかな顔をして外国の本を読んでる兄が、凄くかっこよくて。
わたしの憧れだった。



「…初めて、兄がおかしくなったのは小学2年生のとき。
わたしに好きな子ができた時だった。
ちなみに、藤雅の初恋はいつ?」



未だに、忘れられない。
大好きだった兄に対して、不信感を抱き始めたあの日。


ここから深い話になるから。
続きは家に着いてからね、と。
わたしは、敢えて藤雅に話を振った。
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