春風、漫ろに舞う
「いきなりごめんね、驚かせて。」


「いえ。でもなぜわたしに?」


「彩瀬さんピアノ上手なんだってね。
やっぱり、音楽の先生としてはお話してみたくてね。」


「ああ、その事ですか。
もうやめてますけどね、飽きちゃって。」



それじゃあ、失礼します。
そう言ってからわたしは足早に職員室を出た。


たかがワークを運ぶのくらい別にいいけど、いちいち色々聞いてこないで欲しい。
そういうの、面倒臭い。



「あれ、彩瀬さん運んでくれたの!?」


「あ、うん。たまたま職員室に行ったらついでに頼まれちゃってね。」



ごめんね、と謝ってくる音楽係の子。
うちのクラスでは各教科事に担当生徒がいて、教科担任の手伝いをする。
その子に、大丈夫だよと笑いかけて席に戻る。








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