春風、漫ろに舞う
「…芽来が、普通に生活していれば…一生関わることはないだろうな。」


「……。」



なんとなく、予想はしていた。
あのハンカチを拾った日、連れて行かれた場所。
そこですれ違った人達で察していた。



「お前は、カタギで…表の世界の人間で。
俺は…裏の世界の人間で。
一生交わることは無いはずだった。
…だけど、初めてお前に会った日…あの公園で会った日に一目惚れした。」


「…えっ…?」


「この気持ちを伝えるつもりも、お前と関わるつもりも…最初は無かった。
俺のわがままで、お前をこちら側に引きずり込むつもりはねえからな。」



だけどな…と言葉を続ける一条さん。


知らなかった。
一条さんが、わたしをどう思っていたのかも…。
わたしのことを、どれだけしっかり考えてくれていたのかも…。




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