春風、漫ろに舞う
「「「おかえりなさいませ!!!」」」


「ひっ…。」



内側から門が勝手に開いたかと思うと。
一斉に、頭を下げるスーツの男の人たち。
道の両脇にびっしり並んでいて、玄関までの一本道が出来上がってる。
まるで、任侠映画みたいだ。


その迫力に、変な声が出た。

その声を聞いて肩を震わせる十葵になにか突っ込みたかったけど。
今のわたしには、見慣れない異形の空間にいる気持ちでそれどころじゃなかった。



「若、おかえりなさいませ。」


「ああ。」



平然とした涼しい顔で男の人達の間を通っていく藤雅。
わたしの腰を抱いたままどんどん進んでいく。


あ〜…もうダメかも。
緊張で死ぬかもしれない。



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