モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
「いえ、それは。でも近くにここに飛ばされてきたときのような、転移の魔法陣がある気がするんです」
「魔法陣が?」

 ユリアンは訝しげな顔をしながらも、ベアトリスの言葉に耳を傾けてくれる。

「ちょうどピピが飛ぶ方向です。この大きな洞(ほら)がある木を横目に進むと、けものみちがふた股に分れているはずなんです」

 少し進むとベアトリスの言った通りの分かれ道が現れた。ユリアンは息をのむ。

 ピピが突然、ベアトリスのもとに戻ってきた。いつも通り内ポケットに収まる。

「案内は終わりということか……。ベアトリス、道はわかるか?」
「はい。左に進んで、その先に転移の魔法陣があります」

 ユリアンはなにか言いたそうにしながらも、黙ってベアトリスの隣を歩いている。

 やがて、銀色の淡い光を放つ魔法陣が見えてきた。

「あったわ!」

 ベアトリスはうれしくなって駆け寄ろうとするが、ユリアンに腕を取られた。

「待て」
「ユリアン様?」
「この魔法陣はどこに転移するんだ?」
「どこに?……」

 ベアトリスは首をかしげた。言われてみれば以前この魔法陣でどこかへ転移したような気がするが、その後どうなったかの記憶がない。

「具体的な場所はわからないです」

 脱出出来るかもしれないと期待を持ったが、これを使うのは無理だと思った。

 行き先が分らないのに王太子をのせるわけにいはいかない。

「どうしましょうか……」
< 124 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop