モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
嘘をついているとは考えづらい。どんな危険が迫ろうとも、彼女は決して自分を守る魔法すら使おうとしなかったのだから。唯一見せたのは、自作の竈に火をつけた際の小指の先くらいの小さな炎のみ。
そのくせ普通の貴族令嬢では知るはずのない竈の作り方を知っていた。突然芋を掘り出したときは度肝を抜かれたものだ。
ありえないことだが、ベアトリスから逞しい生活力のようなものを感じたのだ。
別人のようになったベアトリス。
魔法は精神の影響が強く出る。魔力を失ったのもクロイツァー公爵家とはゆかりがない謎の精霊を召喚したのも……。
(本当に別人だからじゃないのか?)
ふとそんな考えが浮かび、ユリアンはぞくりと体を震わせた。
(いやまさか。それはありえない)
人を入れ替える魔法など存在しないのだから。
それでも、浮かんだ考えが頭から離れない。
「……ユリアン!」
突然耳に飛び込んできた声に、はっとした。伏せていた視線を上げると心配そうなゲオルグとツェザールの顔が映る。
「どうしたんだ? 何度呼んでも返事をしないで」
「すまない。少し考え事をしていた」
「あの女のことだよな? ユリアンでも罰するのは難しいか?」
ツェザールが眉をひそめる。
「俺はベアトリスに罰を与えようなど考えていない。あのとき彼女はつまずいたのではなく、転移の魔法陣の存在にいち早く気づき俺を助けようとしてくれたんだ」
そのくせ普通の貴族令嬢では知るはずのない竈の作り方を知っていた。突然芋を掘り出したときは度肝を抜かれたものだ。
ありえないことだが、ベアトリスから逞しい生活力のようなものを感じたのだ。
別人のようになったベアトリス。
魔法は精神の影響が強く出る。魔力を失ったのもクロイツァー公爵家とはゆかりがない謎の精霊を召喚したのも……。
(本当に別人だからじゃないのか?)
ふとそんな考えが浮かび、ユリアンはぞくりと体を震わせた。
(いやまさか。それはありえない)
人を入れ替える魔法など存在しないのだから。
それでも、浮かんだ考えが頭から離れない。
「……ユリアン!」
突然耳に飛び込んできた声に、はっとした。伏せていた視線を上げると心配そうなゲオルグとツェザールの顔が映る。
「どうしたんだ? 何度呼んでも返事をしないで」
「すまない。少し考え事をしていた」
「あの女のことだよな? ユリアンでも罰するのは難しいか?」
ツェザールが眉をひそめる。
「俺はベアトリスに罰を与えようなど考えていない。あのとき彼女はつまずいたのではなく、転移の魔法陣の存在にいち早く気づき俺を助けようとしてくれたんだ」