モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 ベアトリスとは関わりたくないと思っていたはずだ。しかし今は彼女が気になり目で追ってしまう。誰かに傷つけられないか心配でそばで守りたくなる。彼女は自分のものだから誰にも触れさせたくないと思う。

(この気持ちは……)

 ユリアンは戸惑い、けれど認めた。

(俺はベアトリスに惹かれている)

 ユリアンは小さく息をこぼしてから、ツェザールを見すえた。

「ツェザール。俺はベアトリスとの婚約を解消しない」
「は? な、なに言って……」

 ツェザールの顔に驚愕が広がる。ゲオルグはユリアンの気持ちを察していたのか、表立った変化はない。

「お前がベアトリスに対して怒りを抱いているのはわかる。その気持ちは当然だと思う。だが彼女は変わった」

 本当はツェザールだって気がついているはずだ。もう以前の傲慢なベアトリスではないと。その証拠に、ツェザールは口惜しそうに唇を噛みしめる。

「……変わったら過去の罪がなかったことになるのか? 俺はそんなの認められない」
「その気持ちは当然だ。だが今のベアトリスと向き合ってくれないか? ミリアムの件についても今の彼女なら真摯に謝罪するはずだ」

 ユリアンにとってツェザールは幼い頃からともに過ごした友人だ。この先も側近としてともに国のために働いていく、かけがえのない仲間だと思っている。だからこそベアトリスと和解してほしい。しかしツェザールは青ざめた顔で首を横に振る。
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