モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 とてもうれしそうなベアトリスを見ていると、ユリアンの胸にも喜びが広がるのだった。

 思っていた以上に子どもたちは筋がよかった。つい指導に熱が入り、気づけば太陽が真上にさしていた。

「そろそろ休憩にしましょう」

 ベアトリスがそう言って、冷たい飲み物を準備している。公爵令嬢とは思えない手際のよさに感心する。

「お兄さん、素振り百回できたよ!」

 声をかけられてベアトリスから目を逸らす。その直後「ベアトリスさま!」と子どもの悲鳴が辺りに響いた。

 なにかを考えるよりも早く動いたユリアンは、頭をかかえてうずくまるベアトリスの姿を見つけて息をのんだ。

「ベアトリス!」

 思わず叫び彼女のもとに駆けつける。血の気のない真っ白な顔をしたベアトリスは、焦点の合わない目でユリアンを見つめ返す。

 それから苦しそうに顔をしかめ、くたりと意識を失った。
< 139 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop