モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
孤児院で面倒を見るようになってからも、どこか寂しそうに見えたから放っておけずに、ロゼはなにかと気を配っていた。時間とともにレネもロゼに懐いてくれて、いつの間にかまるで本当の姉妹のように仲よくなった。
(それなのにすっかり忘れてしまっていたなんて、私って薄情だわ)
前世の記憶を思い出したときに真っ先に浮かんでいいはずの人物だというのに。
(すべて思い出したわけじゃないから仕方ないのかな)
いまだに二十歳そこそこまでの出来事しか浮かんでいないのだから。
(ロゼは早くに亡くなったんだろうけど、誰かと結婚したり、お母さんになったりしたのかな。そのへんあやふやなのよね)
「ベアトリス、どこか痛むのか?」
考え込んでいると心配そうなユリアンの声が耳に届いた。
「あ、申し訳ありません。痛みはないんですがぼんやりしてしまって」
気になることは多々あるけれど、公爵邸に帰って落ち着いてから考えよう。
「本当に大丈夫なのか?」
「はい」
ユリアンの綺麗な顔に影が差す。心からベアトリスを心配してくれているように見えた。
ベアトリスはそれがうれしくて、顔をほころばせる。
「ご心配をおかけして申し訳ありません」
少し前だったらこんな発言をする勇気は出なかっただろう。『お前のことなど心配していない』など厳しい返事をされそうだと思っていたから。
(それなのにすっかり忘れてしまっていたなんて、私って薄情だわ)
前世の記憶を思い出したときに真っ先に浮かんでいいはずの人物だというのに。
(すべて思い出したわけじゃないから仕方ないのかな)
いまだに二十歳そこそこまでの出来事しか浮かんでいないのだから。
(ロゼは早くに亡くなったんだろうけど、誰かと結婚したり、お母さんになったりしたのかな。そのへんあやふやなのよね)
「ベアトリス、どこか痛むのか?」
考え込んでいると心配そうなユリアンの声が耳に届いた。
「あ、申し訳ありません。痛みはないんですがぼんやりしてしまって」
気になることは多々あるけれど、公爵邸に帰って落ち着いてから考えよう。
「本当に大丈夫なのか?」
「はい」
ユリアンの綺麗な顔に影が差す。心からベアトリスを心配してくれているように見えた。
ベアトリスはそれがうれしくて、顔をほころばせる。
「ご心配をおかけして申し訳ありません」
少し前だったらこんな発言をする勇気は出なかっただろう。『お前のことなど心配していない』など厳しい返事をされそうだと思っていたから。