モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 けれど先入観を持たずに見るとユリアンは優しい人だ。

 冷たい態度を取るとしたら相手に問題がある、まさに以前のベアトリスのような人間に対してのみなのだろう。

 ユリアンはベアトリスをしばらく見つめてから、小さく息を吐いた。

「大丈夫そうだな。よかった、本当に心配した……」
「え……それは申し訳ありません」
「謝らないでくれ。責めてるわけじゃないんだ。ただ君になにかあったらと思うとなにも手につかなかった。がんばっているのはわかるが、もう少し自分にも気を使ってくれ」
「は、はい」

 ユリアンは心から訴えるようにベアトリスを見つめる。

 予想以上に心配させてしまったようだ。

(それに……自惚れているかもしれないけど、討伐訓練を終えてから好意を感じる)

 お互い名前を呼び合うようになったことで、親近感が増したからだろうか。

「今日はもう屋敷に帰った方がいいな」
「はい。そういえばサフィとレオはどうしたのかしら」
「侍女と護衛は子どもたちのところだ。ベアトリスが倒れてみんな不安になっていたから、なだめてもらっている」
「まあ、そうなんですか。では帰る前に子どもたちにも顔を出さないとですね」

 寝不足だったとでも言って安心してもらおう。

「そうだな」

 ベアトリスがベッドから出ようとすると、ユリアンがとても自然に手を差し出した。

「あ、ありがとうございます」
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