モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
「ありがとうございます」
「ああ」

 やわらかい微笑みは優しく美しく、ベアトリスは思わず胸が高鳴るのを感じた。

(やだ、ユリアン様にときめいてどうするのよ)

 彼とはそのうち婚約解消しなくてはならないのに。

 以前は望んでいた婚約解消だが、彼との距離が近くなった今、寂しさのようなものを感じている。

(これは未練という感情じゃない?)

 これではだめだ。

「あの、ユリアン様」

 やや身を乗り出して呼びかけるベアトリスをユリアンはやわらかな表情で受け止める。

「どうした?」
「あの、聖女様の件、その後どうなりましたか?」

 討伐訓練のときも成果なしだったので、気になっていた。

「ああ、クロイツァー公爵を筆頭にほかの二家の公爵とも情報共有をして捜索している」

 自分の気持ちに困惑したベアトリスは無理に別の話を振ったが、ユリアンはとくに気にする様子もなく返答した。

「では、まだ見つかっていないんですね」

 ユリアンは浮かない顔でうなずいた。

「難航している」
「そうですか……」
「だが俺はなんとしても聖女を捜し出すつもりだ。だから心――」
「はい、聖女様は未来の王妃となる方。私が出来ることは少ないかもしれませんが、お手伝いさせていただきます」

 ユリアンが聖女を捜すと言ったとき、並々ならぬ決意を感じた。

(それほど聖女様を求めているんだわ)
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