モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
(どうして気づかなかったんだ。驚くくらい人格が変わったのだから、結婚に対する考え方が変わるのも当然なのに)

 傲慢なのは彼女ではなく自分だ。あくまで選ぶ立場で、ベアトリスの立ち位置はなにがあっても変わらない。ユリアンが望めばベアトリスはそれに応える。心の底ではそれが当然だと思っていたのだから。

「本当に……愚かだな」

 深いため息がひとりきりの車内に響いた。



 王宮に戻ると待ち構えていたように侍従がやって来た。

「王太子殿下、国王陛下がお呼びです」
「わかった。すぐに行く」

 ユリアンは休む間もなく侍従の後に続き、国王の執務室に向かう。

 部屋の中にはユリアンの父である国王と、宰相、そしてベアトリスの兄ランベルト・カリス・クロイツァーがいた。

 彼の存在を意外に思っていると、国王から前置きなしに声をかけられる。

「聖女捜索の報告を受けた。手がかりはなしだ」
「……そうですか」
「聖女が当家の領地にいるとは考えられません。聖女が我が領内に向かう馬車に乗ったのだとしても、行き先が変更になったか、途中で降りたのでしょう」

 ランベルトが補足するように言う。かなり自信を持った口ぶりだ。

「なぜ断言出来るんだ?」
「教団直轄領から我が領の道中には厳重な警備を敷いているるのです」
「そういえば、クロイツァー公爵家と教団がもめたことがあるそうだな」
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