モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 ユリアンは目を閉じた。悪い予感があたってしまったような感覚に、体が重くなるような気がした。

(教団の情報が嘘なのかもしれない)

 聖女が子どもの頃神殿を出たという話自体が、なにかを隠したい教団の意図による作り話だったとしたら。

(大変なことになるな)

 王家とフィークス教団は長い間、お互いの領分を侵さずよい関係を築いてきた。

 教団は国政に必要以上に口を出さず、王家は神事や神木については教団の意向を尊重していた。

 それが崩れたら、大きな混乱が起きる。

 言い様のない不安に、ユリアンは凛々しい顔を曇らせた。




 その後、国王から今後の方針について指示を受け、部屋を辞した。途中ランベルトに目配せをして、彼とともにユリアンの執務室に移動した。

「急にすまないな」

 入室してすぐに人払いをする。ランベルトにソファーに座るよう勧めると、彼は優雅な動作で腰を下ろした。

「お気遣いなく。私も近いうちに王太子殿下と話したいと思っていたところです」
「そうか」

 なんとなくだがランベルトの話というのは、公務ではなく個人的な内容のような気がした。おそらくベアトリスの……。

「それは今から話す内容と重なっているかもしれない。ベアトリスの件だ」

 ランベルトはわずかに口角を上げた。

「はい」
「最近の……具体的には召喚式の後のベアトリスの様子に、気になる点はあるか?」
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