モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 大貴族にもなると兄妹とはいえ、滅多に顔を合わさないなんてこともある。

 しかしクロイツァー公爵家の家族仲は良好で、以前ベアトリスが悪評をこれでもかと言うほど集めていた頃も、彼女を見捨てず大切にしていた。兄であるランベルトなら、ベアトリスの変化についてなにか知っているかもしれないと思ったのだ。

 ランベルトは少し考えるようにしてから口を開いた。

「あの子はとても変わりましたね。情緒が安定して、使用人がミスをしても激高することはなくなりました。我慢しているわけではなく腹が立たない。怒りの沸点が比較できないほど高くなった。それは無関心だからではなく、相手の気持ちを察する優しさからきているように見えます」

 ランベルトはベアトリスについてよく見ているようで、ユリアンと同じような考えを持っているようだった。

「学院でも同様だ。周囲に気を使い、身分によって対応を変えたりしない。ベアトリスが癇癪を起こさなくなったことで、生徒たちは安心している。いい方向への変化だがひとつだけ問題がある。ベアトリスの魔力が著しく低下しているんだ。真剣に魔力を込めて蝋燭の火をともす程度しか出来ない」

 ランベルトはユリアンの言葉に真剣に相づちを打つ。

「……まるで別人だ」

 ユリアンがそうこぼすと、ランベルトは困ったような表情になる。
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