モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
ベアトリスの護衛が増えて数日が過ぎた。
その日は久しぶりに例の夢を見た。
ただ自分がロゼ・マイネで怖い思いをしたことはわかるが、細かな内容までは目を覚ましたのと同時に忘れてしまっていた。
「どうして前世の夢ばかり見るのかしら。もしかしてなにかのお告げ?」
王都で騒ぎが起きるという物騒な情報もあるくらいだから、もっと安全に注意しろとの警告のようなものなのか。
そんなことを考えながら、ふとベッドから少し離れた位置にある美しい飾り戸棚の方を見た。そこにはベアトリスの大事にしている精霊ピピの寝床がある。
最近は以前のように食事中に呼んでも飛び出してくることがなくなり、やたらと寝てばかりいる。
心配だったが、そもそも精霊は人と違って病気にかからないし食事をしないものだから、様子を見守るしか出来ずにいた。
けれど今朝はこれまでと状況が違っている。
ピピは元気がないどころかぐったりしており、あきらかに苦しそうにしているのだ。
「ピピどうしたの!」
慌ててベッドから降りて、ピピの寝床である美しい鳥かごに向かう。
ピピは鳥かごの底に敷いたクッションの上に横向きに転がり、小さな羽を投げ出していた。
ベアトリスはかごに手を入れて、慎重にピピを取り出す。
「ピピ」
顔を近づけ、名前を呼ぶとピピはわずかに身じろぎした。