モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 声が聞こえてはいるようだが、それでも少し反応する元気しかないように見える。

「どうしよう……」

 動揺しているとノックの音がした。

「お嬢様、おはようございます」
「サフィ……」
「どうなさいました?」
「ピピの様子がおかしいの」

 ベアトリスの言葉に、サフィは眉をしかめて鳥かごを見遣る。すぐに険しい表情になった。

「これはいったいどういうことでしょう」
「わからないわ。目覚めたら苦しそうで……どうしよう」
「公爵様にご相談してはいかがでしょう」
「あ、そうね!」

 サフィの手を借りて大急ぎで身支度をして、いつも通りダイニングルームに向かう。

 そこに父がいる。そう思っていたが、今日に限って父も兄もいなかった。

「トリスちゃん、そんなに慌ててどうしたの?」

 母だけがいつも通り席に着いており、ダイニングルームに飛び込んで来たベアトリスを見て目を丸くする。

「お母様おはようございます。お父様とお兄様はこれから来るのでしょうか」
「いいえ。王宮で問題があったようで朝早くに使いの者が来たの。ふたりはすぐに支度して出ていったわ」
「問題が?」

 顔色を変えるベアトリスに、母はゆったりと微笑む。

「そんなに心配しなくて大丈夫よ。先日から警戒している件とは別の政治的な話だから」
「そうなんですね」

 幾分かほっとして席に着く。

「お父様とランに用があったの?」
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