モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
「ユリアン様、私は大丈夫なので、早く王宮に戻ってください」
彼が責任感が強いのはわかるが今は非常事態。名前ばかりの婚約者を放っておいたとしても責める者はいないだろう。それ以前に、ベアトリスが相手では当然と認識されているかもしれないが。
ところがユリアンは信じられないといったように目を見開いた。
「なにを言っているんだ? こんなときに君のそばを離れるなんて俺には出来ない」
ふたりの関係からは考えられないセリフではあるが、一方でそれがユリアンの本心であるとも感じた。
(ユリアン様が自分のことを〝俺〟と言うのは素が出たとき)
つまり今の発言は彼が心からそう思っている表れと言っていい。
(でもどうして)
最近親しくなったとはいえ、聖女より優先されるはずがないのに。
「いくらベアトリスの頼みでもこれは聞けない。公爵邸まで見送らないと落ち着けないんだ」
「……はい」
ユリアンがここまで言うとなると、ベアトリスがどう伝えても聞き入れてくれないだろう。
車寄せには王家の馬車と近衛騎士が待機していた。
ユリアンに助けられて馬車に乗り込む。
すぐに走り出したが、ユリアンの手はまだベアトリスから離れず、むしろ先ほどよりもぎゅっと握られている。
「ユリアン様?」
いったいどうしたというのだろうか。常とは違う彼の様子にベアトリスの戸惑いはますます大きくなる。
彼が責任感が強いのはわかるが今は非常事態。名前ばかりの婚約者を放っておいたとしても責める者はいないだろう。それ以前に、ベアトリスが相手では当然と認識されているかもしれないが。
ところがユリアンは信じられないといったように目を見開いた。
「なにを言っているんだ? こんなときに君のそばを離れるなんて俺には出来ない」
ふたりの関係からは考えられないセリフではあるが、一方でそれがユリアンの本心であるとも感じた。
(ユリアン様が自分のことを〝俺〟と言うのは素が出たとき)
つまり今の発言は彼が心からそう思っている表れと言っていい。
(でもどうして)
最近親しくなったとはいえ、聖女より優先されるはずがないのに。
「いくらベアトリスの頼みでもこれは聞けない。公爵邸まで見送らないと落ち着けないんだ」
「……はい」
ユリアンがここまで言うとなると、ベアトリスがどう伝えても聞き入れてくれないだろう。
車寄せには王家の馬車と近衛騎士が待機していた。
ユリアンに助けられて馬車に乗り込む。
すぐに走り出したが、ユリアンの手はまだベアトリスから離れず、むしろ先ほどよりもぎゅっと握られている。
「ユリアン様?」
いったいどうしたというのだろうか。常とは違う彼の様子にベアトリスの戸惑いはますます大きくなる。